押出機(エクストルーダー)

押出機(エクストルーダー)は、フィラメントを供給し、層ごとに堆積する役割を担うFDM方式3Dプリンターの中核コンポーネントです。軽量なボーデン(Bowden)システムから頑強なダイレクトドライブ構成まで、押出機の設計は印刷品質、材料互換性、速度に大きく影響します。ここでは、押出機の動作原理、主要な種類、重要なメンテナンス方法を包括的に解説します。

3Dプリンターの押出機の仕組み

押出機の主な機能はフィラメントをホットエンドに押し込み、そこで溶かしてノズルから押し出すことです。このプロセスには以下が含まれます:

  1. フィラメント供給: ステッピングモーターがギアを駆動してフィラメントを噛み、前進させます。

  2. 溶融: 押出機から供給されたフィラメントをホットエンドが溶融点まで加熱します(例:PLAは約200°C)。

  3. 押出: 溶融したプラスチックがノズルを通して押し出され、ビルドプレート上に材料を堆積します。

  4. 層の接着: 冷却ファンが材料を固化させ、層同士の接着を可能にします。

主要な構成要素には 駆動ギア (フィラメントを押す)、 アイドラ (圧力をかける)、 ホットエンド (フィラメントを溶かす)、および ノズル (押出された材料の形状を決める)があります。

押出機の種類:ボーデン(Bowden)対ダイレクトドライブ

1. ボーデン押出機

  • 設計: ステッピングモーターはプリンター本体フレームに取り付けられ、フィラメントはPTFEチューブを通ってホットエンドに供給されます。

  • 利点:

    • 印刷ヘッドの重量が軽くなるため高速化やゴースティング(残像)低減に有利です。

    • PLAやPETGのような剛直なフィラメントに適しています。

  • 制限事項:

    • 柔軟フィラメントの取り扱いが不得手(例:チューブ摩擦によるTPUの詰まり)。

    • 糸引き防止のためにより長いリトラクション距離が必要です。

2. ダイレクトドライブ押出機

  • 設計: ステッピングモーターが印刷ヘッドに直接取り付けられ、フィラメント経路の長さを最小化します。

  • 利点:

    • 柔軟なフィラメント(TPU、TPE)に対して優れた制御を提供します。

    • リトラクション距離が短くて済むため印刷の鮮明さが向上します。

  • 制限事項:

    • 印刷ヘッドが重くなるため最高速度は制限されます。

    • 慣性に対応するため堅牢なフレーム設計が必要です。

Kingroonによるダイレクト対ボーデン押出機の図

高度な押出機設計と機能

最新の押出機は専門的な機構で性能を向上させます:

  • デュアルギアシステム: 同期ギアを使用して安定したグリップを実現し、フィラメントのスリップを低減します。

  • オービタルギアボックス: 軽量パッケージで高トルクを実現する小型ギア減速機を採用します。

  • 高温オプション: ノズル温度を最大500°Cまで対応させるために液体冷却を統合し、PEEKやPEIの印刷を可能にします。

  • 研磨性フィラメントの取り扱い: 炭素繊維やガラス充填複合材には硬化鋼ギアやノズルが不可欠です。

一般的な押出機のトラブルシューティング

押出不足(アンダーエクストルージョン)

  • 原因: ノズルの詰まり、押出機のグリップ不足、またはスライサー設定の誤り。

  • 解決策:

    • ノズルとボーデンチューブを清掃します。

    • ノズル温度やフロー率を上げます。

    • フィラメント供給の正確さを確保するためにEステップを較正します。

フィラメントのグラインディング(噛み潰し)

  • 原因: 摩耗したギア、過度のアイダープレッシャー、またはフィラメント径の誤りが原因です。

  • 解決策:

    • 摩耗した駆動ギアを交換します。

    • グリップとフィラメントの変形のバランスを取るためにアイダーテンションを調整します。

ストリンギング/オージング

  • 原因: ノズル温度が高すぎるか不十分なリトラクションが原因です。

  • 解決策:

    • リトラクション距離を最適化します(ダイレクトドライブは1〜2 mm、ボーデンは4〜6 mm)。

    • スライサー設定でコースティング(coasting)を有効にします。

メンテナンスのベストプラクティス

  • 定期的な清掃: ブラシやエアダスターでギアやフィラメント経路の破片を取り除きます。

  • 潤滑: 摩擦を減らすためにギアに最小限のPTFEグリースを塗布します。

  • フィラメントの保管: 吸湿性の高い材料(ナイロン、PC)は乾燥ボックスに保管して湿気吸収を防ぎます。

  • ノズルの点検: 研磨材を印刷する際は摩耗を点検し、必要に応じて真鍮ノズルを硬化タイプに交換します。

適切な押出機の選び方

用途

推奨される押出機タイプ

柔軟なフィラメント

ダイレクトドライブ

高速印刷

ボーデン

研磨性複合材

硬化部品を備えたデュアルギア

高温環境

液冷式

Last updated

Was this helpful?